ホームページでの[1]「本書の内容の若干の紹介」(2)第2部第1篇の擬制資本論の3)の(2)の分かりにくい「株価の上下」の予測分布についての若干の紹介。
「データDがすでに手元にあり、未知の値χ*を求める場合について考えると、株価は景気循環に依存するから、パラメータθを景気循環Ktにすると、株価の変動のデータをS、求める未知の値s*とすると、
予測分布P(s*|S)=∫P(s*|Kt)P(Kt|S) dKt・・・(K-1)式
上記の(K-1)式にはそれまでの金利の上下をも含まれている景気循環を反映したものである。ここまでは確率的にも原理的である。・・・・
・・予想される政策金利や紙幣増減刷をβとすると、P(s*|β)(政策金利上下や紙幣量上下のもとでのs*の確率)etc.と景気循環の反映を受けた株価(K-1)式との積となる。このP(s*|β)との積によって、予測しにくさとしてのエントロピー(不確定度)も増大する。βによって株価は↑かも知れないし、効果は失効しているかも知れないし、↓かも知れない。いずれにしてもエントロピーも増大する。
上記のetc.には「政治的対立およびその延長である戦争」などの条件付き確率も入る。それは株価に最も影響を与える。価値増殖過程と相対している交換過程には、人間の利殖欲望が介在しており、例えば戦争に利益をもつ人々もおり、戦争で測りきれない損害をうける多数の人々がおり、数学で解しきれない諸矛盾などによっても変動する。利潤率の歴史的傾向的低下の時代では、なおさらである。」
上記該当箇所は、第1部および第2部の前半部から辿らないと主旨が分かりにくいと思いますが、紹介します。
株価は、BS方程式と正規分布では表現できなかった。株価に積率母関数があるかも知らないし、株価の変動をガウス混合分布やその他の確率分布で表現できるか私は知らないので、まず、ここでは発想を変えて数値にこだわらずに株価の変動が激しい局面の原理を探求しよう。ただし、対外債務、対外金利に従属した再生産構造の発展途上国などは除き、先進資本主義国についてである。
ところで、価値の変化と価格の変化とは、関連しながらも区別があり、違うものであるから価値関数と価格関数とは違うものである(注)。以下の項ではそれぞれを測度論から考察する。
主に第1部では価格の変化を不連続として論じる必要性があったが、ここでは無数の取引の結果として、連続として近似する。なぜなら価格は交換過程では交換価格となって「連続」的変化という現象形態を近似的にとるからである。
(注)人間労働には具体的有用的側面の使用価値と抽象的な側面との両側面がある。後者が有用物生産のための社会的平均的な労働時間で測られる価値である。価格は価値の現象形態である。
(1)
①「ⅱ)株価の変動のいくつか事項要因とベイズの定理、推論的試行」での上記のⅱ)事項ai)~(Ii)等を便宜のため、純経済的な観点から(ai)~(Ii)を記号α(α:(ai)~(Ii))とし、それぞれを可測関数と仮定し記号をfαnと変更し、かつルベーグ積分確定可能とする(注1)。そのときルベーグの収束定理、(n→∞のとき)fαn→fαが成立する。
②価格は価値の現象形態
まず、fαでは各点の数値に拘泥せず簡明な点から見る。
mを測度関数としてルベーグ積分 ∫Ef(χ)m(dχ)=[f](E)と∫Eg(χ)m(dχ)=[g](E)とが、ほとんど至るところ[f](E)=[g](E)a.c.とするルベーグの同値類を導入する(注1)。
そこで商品価格Wと価値ωを関数としてみると、その積分に関して[W]と[ω]とをルベーグの同値類としてみることが出来る。
「第一部第Ⅰ篇の[Ⅰ]の(1)諸商品同士の話し合い」で述べたように産業循環(資本蓄積の継起的歴史、景気循環)は、拡大的にしろ、縮小的にしろ、再生性、再起性がある。それぞれの局面を仮に商品価値・[ω]および価格[W]という同値的関数とし、基本の価値mで測るとすると それぞれ [ω]=∫EF(χ)m(dχ) 、 [W]=∫EY(χ)m(dχ) と表すことが出来る。つまり[ω]と[W]とは同値類(ほぼ同じものという数学的概念)である。価格は価値の現象形態だから同値類と見ることは妥当性がある(注2)。
(注1) 純経済学観点とは、例えばf αnのひとつである戦争という事象をとるとすると、それが結局、価値および価格に帰着してくるという意義で可測関数やルベーグ積分確定可能と仮定している。
測度論がなりたつためには、集合Xと集合X上のα-加法族Mとの対(X、M)を可測空間、さらに測度を入れて(X、M、μ)測度空間とする。空間とは議論の対象のことである。
(注2)関数fの|f|の積分、同様に|g|などの積分をベクトルfなどの{長さ}と考え、それらがalmost everywhereで「等しい」と考えるとき[f]=[g]a.e.と書きルベーグ同値類[f]という。
① f=fa.e. ②f=g a.e. ⇒ g=fa.e. ③f=ga.e.、g=ha.e.⇒g=ha.e.などが成立していく。可積分関数空間の同値類には積分の定理やルベーグの収束定理も成り立つ。
(2)しかし、ルベーグの同値類は普通の関数ではないので、各点の数値がとれない。
あとで詳しく述べるが、Wとωとの間には、W(χ)=∫Ktdωなる関係があり、それはWとωとの背離過程と一致過程を示すことになる。
景気局面を古典的に4つの局面とすると、それぞれの局面の価格の傾向がある。そこで、価格WkをW1 、W2 、W3 、W4として4つの局面にわける。
株価の変動が激しい局面とは「繁栄」→「恐慌」のときである。[ω]と[W]とを同値的関数から今度は、関数ωと関数Wとしてみると当然ながら関数値がW→≒ωとなるのは、恐慌時である。
景気循環の「繁栄」(不均衡が臨界点まで拡大)において不均衡の矛盾が爆発し、恐慌に至る。恐慌では経済関係が一時的に止まりリセット(注)に入っていく。そこでは賃労制のもとで一般化した価値法則のもとでの、経済法則、事象を経済諸関数fαnとし、fαのそれぞれが→F(価値法則)に基ずく価値に対応した範囲に一様収束するとすると、それは恐慌とそれに続く信用膨張の崩壊時である。価値の規定は、当該社会一般(当該資本主義の発展段階)が処分できる労働量として現れ、景気循環のそれは恐慌、不況時には、商品価値ω(tk4 )に直接的に反映する。それは価値法則の貫徹=利潤率で測られた「価値」法則への収束と等価である
恐慌(tk4)・不況での経済諸関係が商品価値ω(tk4)の範囲を反映して収束・収縮するとすると、株価格も、ω(tk4)≒W(tk4)に対応して信用の崩れとともに株価格S(t)も↓と暴落する。
つまり、恐慌・不況(tk4)での商品価値ω(tk4)の範囲を反映して収束する。この時、それぞれ関連しながらも独自に運動していたfαnのfαa、fαb、・・・のそれぞれは、不連続的にそれぞれカーブを変え、急速にfαn→F(価値法則)に価値収束する。その裏面の客観性進行においては内積(fαa・fαb)=0などとなりそれらは相互に影響を与えなくなる。株価格は、ω(tk4)≒W(tk4)に対応して信用の崩れとともに株価格S(t)↓と暴落する(注1)(注2)。さらにこれにつれて当該社会関係が受け入れ可能な状態まで価格崩壊の現象形態をとって価値(不変資本価値、固定資本価値などの)崩壊もおこる。これが大恐慌のプロセスである。これがアメリカ大恐慌のプロセスである。日本の90年代の不況も同過程である。
株価が合理的になるのは、崩壊の最後の一瞬だけであり、その瞬間、経済時間は止まり、それから遅遅たる停滞局面となる。
(注1)現実資本と擬制資本との関係では、恐慌の兆しとしては金融面での逆イールドがよくいわれる。それは現実資本の設備投資の過剰、新投資の減退の反映であろう。さらに現実資本と信用(売り掛けや買掛けの未払いの増大、手形の不渡り)や銀行融資などの信用の焦げ付き現象の増大などが表面化する。
逆イールドなどで過剰生産の兆しが潜行すると同時に、そのような過剰生産潜行時に投資資金は過剰となり、過剰資金や0金利のレバレッジの株への投機の飛躍的増大によって、擬制資本の架空化が幾何級数的に進み、株暴落時に膨大な資金、富が天文学的に失われる。株は資本の擬制的社会的形態であるがゆえに大規模な倒産が発生する。
(注2)商品価格は、景気循環によって左右される。その景気循環と恐慌の構造とシステムは、「第1部、第Ⅱ篇[3]固定資本論と恐慌<1> 資本と総資本の歴史性、社会の歴史性<2>固定資本論と再生産と恐慌<3>社会的生産部門(1)再生産の均衡条件と産業循環(2)資本主義の境界条件と景気循環(新陳代謝様式)①固定資本の時間的改廃と周期②労働力の再生産費とⅠ(v+m)=Ⅱc」また「第Ⅲ編 利潤率の傾向的低下と利潤量増大との「相補性の破れ」(とくに利潤率の傾向的低下と金融)の<1>恐慌の究極的要因―賃金率が理念的独立変数へ(1)価値法則は賃労働の一般化(労働力の商品化)の基礎の上で普遍法則となる(2)歴史性=利潤率低下の傾向的法則(加速度的蓄積は不変資本の累積的増大=利潤率の傾向的低下)(3)「利潤率低下と利潤量増大との『相補性(相補関係)』の破れ(4)資本主義の原理の確認などを参照。価値論からの言及は次の項「(3)労働価値説からより詳しく考察する」以降で展開される。
(2018年注)第1部「<3>恐慌の究極的要因としての賃金率」[1]の(1)のⅲ)の項で述べたように企業、国家などは「ISM製造業景況指数」などで予測をたてる。アメリカは、ITという新しい社会的分業の発祥地であり、この新しい社会的分業が世界的趨勢になるにつれ、その技術寡占化によってIT巨大企業の台頭とともにGDPも日本などと違って伸びてきた。
米は、現在は新規受注↑、仕入れ価格も↑の局面となっている。大規模減税もあり、「繁栄」局面である。しかし、米の借金額は天文学的であり、さらに大規模減税による巨大な財政赤字、それ故の一国主義と貿易戦争という危険な環境での「繁栄」というものであろう。
(3)労働価値説からより詳しく考察する。
商品価格をW、価値をω、労働量ℒ(生産手段からの移転部分と新たに付け加わった労働量)とし、写像Tω;ℒ→ω、写像TW;ω→Wとする。それらの写像を測度とし、時間経過で局面変化するとし、tを添え字としてつけ、それぞれTωt、TWtとする。
ω(E)=∫Eω(χ)Tωt (dχ)・・・・(A1)
W(E)=∫EW (χ)TWt(dχ)・・・・(A2)
(A1)と(A2)は価値、価格のそれぞれ通常見られる関係である。
ω(E)は生産諸条件(生産手段の変化、革新や労働条件、労働能力の変化等)によって変動する(注)。
W(E)はω(E)の変化と関係しながらも資本蓄積の局面、歴史性、つまり景気循環の局面によって変化していく。
(注)価格は価値の現象形態であるが、ω(E)は生産諸条件(生産手段の変化、革新や労働条件、労働能力の変化等)によって変動し、価値と価格とは特定の時点でしか一致しない。しかも価格は日常、感覚的、数値的のものとして表われるが、価値は隠れている。つまり現象の背後の本質である。とくに確率的推論でするような、得られたデータの確率的変動の背後にある「或るもの」のようなものである。
ω(E)とW(E)は関連しながらもそれぞれ変化の独自性を持ちながら変化していくので、価格は価値の現象形態ともいえる。
したがって、以上の2式の関係には 写像TWtが写像Tωtに関して絶対連続(TWt<<Tωt)と仮定すると、測度としての関数Tωt(:ℒ→ω)と測度としてのTWt(:ω→W)の間には、ラドン・ニコディムの定理によれば、TωtとTWtとの密度変化率として、 TWt=∫EKtdTωt・・・(3)の(ⅰ)なる可測関数のKtが存在している。
KtはTWとTωとの密度変化率である。Ktを簡単にdTWt/dTωtと簡略表記するならば、それは景気循環を表す。もちろん、景気循環と恐慌の構造とシステムという点から第Ⅰ生産部門の過剰傾向や支払い能力との関連による消費などのディテール、また逆イールドなどで示唆されるものでもある。したがって、対外債務、対外金利に従属した再生産構造の発展途上国ではなく、先進資本主義国についての景気循環である。
(注)、ラドン・ニコディムの定理
X(ℬ、m)をm(X)<∞を満たす測度空間とする。νをℬ上で定義された測度で
ⅰ) ν(X) <∞ 、ⅱ) ν<<μ;(νはμに対して絶対連続)を満たすとする。
この時、f∈L1の要素として、ある可測関数fが存在して、すべてのA∈ℬに対して次式が成り立つ。
ν(A)=∫Af(χ)dm(χ)
また同じ空間上にσ-有限測度μが存在し、νがμに対して絶対連続ならば、
ν(A)=∫AGdμが成立しGは、dν/dμと表記される。有限測度μは変化の割合を計算する測度である。
(注)、(dTWt/dTωt);Kを確率密度関数と考えれば、∫EKtdEはある種の抽象的な景気循環確率分布となる。
(注)、「仮に消費をほぼ一定と仮定すると、マーシャルkは投資への配分と現金残高との仕分けである。次期のマーシャルkのそれは、利潤率と新投資に依存し、したがって景気循環、産業循環に規定され、次の景気循環に規定されている。」と第一部で述べた。
写像Tωt、TWtとは、それぞれTω;ℒ→ω、写像TW;ω→Wでそれらの写像を測度とし、時間経過で局面変化するとし、tを添え字として、それぞれTωt、TWtとしたものである。
Tωtは価値の時期的変化を測る測度である。
TWtは価格の時期的変化を測る測度である。
マーシャルK(これからはkMと書く)は一年ごとに利潤率と新投資(経済循環)に依存した現金仕分けであるが、Ktは商品価格と価値との密度変化率だから年kM→景気循環のKtへと飛躍対応し、マーシャルK(kMと書く)からの深化である。
(注)、先進資本主義国による資本投下によって一定左右される資本主義を後進資本主義というならば、先進資本主義が恐慌の気配がするや、利子率の上昇や資本の引き上げなどによって、後進資本主義国は先進資本主義国よりも急速に景気が下降する場合もあろう。
(4) 価格は価値の現象形態だから、同値関係と見なせるが、普通の関数同士とみるとその変化は違っている。価格は景気循環で変動するが、価値は競争的生産諸条件で変動する。
価値の現象形態の価格を価値の同値関係として[W]と表すとその関数Wが→≒ωとなるのは、恐慌時である。価値法則Fω、W(ω、WはFの要素)として、関数ωとWとの間には|W-ω|
ε→=0となる極限があり、それが恐慌時である。価値法則Fの貫徹=利潤率で測られた「価値」法則への収束のことである。
(生産物)商品価値ω=C+V+mとすると、恐慌時にはmは利潤Pに転化し難いか、実現しないので、価値C+V+mからmが消えて「価値C+V」近辺が価格の関数値となり、「それ以下」にもなりうる(注)。それは、m/(C+V)=P利潤率が著しく低下することである。「それ以下」とは、人間の意識の収縮による交換過程での揺らぎである(支払い能力の欠如、いわゆる消費マインドの冷え込み)。
価格が恐慌・不況での商品価値ω(tk4)の範囲を反映して価格が収束・収縮するとすると、タイムラグをもって信用の崩れとともに商品価格も、株価格S(t)も↓と暴落する。
(注)mが消えると言うことは労働力の価格の低減をはかるか、労働力がいらないことであり、雇用の縮小、失業のことである。
(5)<イ> TWt=∫EKtdTωt・・・(ⅰ)の可測関数Ktは、TWtとTωtとの密度変化率である。KtはdTWt/dTωtの近似だから、したがって関数ωと関数Wの間には、
W(χ)=∫Ktdω・・・・・(3)の(ⅱ)なる関係があり、それはWとωとの背離過程と爆発、一致過程である。
曲線Ktを微分する。例として仮に簡単のために、2次関数とすると、dKt/dχが正の時は上に(斜め上がり)⇒dKt/dχ=0のχで最大値⇒dKt/dχが負の時には下に(斜め下がり)で
<不況→活況><繁栄>(斜め上がり)、<繁栄→恐慌>(斜め下がり)それぞれの景気局面に対応する。
<ロ> 測度論と確率論の関係から、つまり、可測関数と確率変数との対応関係から、(3)の(A1)と(A2)式のW(χ)およびω(χ)を確率変数とみなすと、(A1)と(A2)式の積分は、Eという演算子によって、確率変数のそれぞれの期待値と見なすことができる。
∫ℇW(χ)TWt(dχ)=E[W(χ)]、 ∫ℇω(χ)Tωt(dχ)=E[ω(χ)]でそれぞれの期待値となる。(離散の場合は∫からΣにかえればよい。)
今度は確率論から、期待値と分散の存在を仮定し、その共分散を考え、思考実験的に述べる。景気循環には、E[ω(χ)]kとE[W(χ)]kとの対応のそれぞれの局面の価格の傾向がある。
共分散Cov[ω(χ)、 W(χ)]=E[(ω(χ)-E[ω(χ)])(W(χ)-E[W(χ)])おいてE[ω(χ)])とE[W(χ)]のそれぞれの存在を仮定する。
恐慌のときはω(χ)=W(χ)だから商品価格W(χ)と株価格S(χ)との共分散を考えると、Cov[S(χ)、W(χ)]である。
時間的、時期的に考えるためにω(χ)=W(χ)を境にそれ以前と以後を分ける。
W(χ)と株価格S(t)とが仮に非線形としても、
①ω(χ)=W(χ)のそれ以前は、Cov[S(χ)、W(χ)]>0でW(χ)、S(χ)それぞれ平均的には増加である。
②ω(χ)=W(χ)時とその後の一定期間には Cov[S(χ)、W(χ)]~0で株価と商品価格とは無相関的様相で、関係は明確でなく過剰資金と利殖欲望に左右される。Cov[S(χ)、W(χ)]<0即ちW(χ)↓にもかかわらずS(χ)↑もありうる(相関係数でみると、ρS(χ)、 W(χ)<0でW(χ)↓にもかかわらずS(χ)↑もありうる)。W(χ)↓という重力があるにもかかわらず、浮遊状態のような様相を呈する。そこでは、価値形成過程からあたかも交換過程が完全独立したかのように人々の根拠なき思惑が一時的に支配する。政策金利、過剰資金によって急激に株価は尖昇し、その後、それぞれの思惑によって上下を繰り返す。そこは主観が支配する一時的現象である。
しかし、ついに思惑は幻滅に変わる。
③. 上の②以後は、W(χ)↓・・が時間経過にともなって効いてくる。S(χ)↓↓・・となる。とくに、信用の崩れとともに株価格も、株価格S(t)も↓↓↓・・と暴落する。
(注)測度空間(X、M、μ)のμが0<μ<1の時、μを確率測度、(X、M、μ)を確率測度空間という。
(6)W(χ)=∫Ktdωなる関係、つまり景気循環におけるE[ω(χ)]kとE[W(χ)]kとの対応のそれぞれの局面の価格の傾向から、商品価値と価値との関係およびベイズの定理と株価の主観的推論とを組み合わせれば、Wkの局面と株価Sとの複雑怪奇な局面傾向があらわれてくるであろう。
(注) [ω]と[W]とを同値的関数ではなく、関数ωと関数Wとしてみると当然ながら関数値がW→ ≒ωとなるのは、恐慌時である。関数ωと関数Wとが絶対連続と仮定すると、測度としての関数ωと関数Wの間には、
W(χ)=∫Ktdωなる可測関数Ktが存在している。それはWとωとの背離過程と爆発、一致過程を示すことになる。
景気循環にはそれぞれの局面の価格の傾向があり、その最後のリセット期間では、倒産にともなう解雇、失業、過剰生産資本・固定資本の破壊ともなう失業、他方では拡大した第Ⅰ部門と第Ⅱ部門との矛盾の相互作用的爆発によって農業恐慌が起こる。
(1)古典的景気循環では、商品価格W(tk4)は恐慌・不況(tk4)での商品価値ω(tk4)の範囲を反映してω(tk4)≒W(tk4)に収束する。株価格も、ω(tk4)≒W(tk4)に対応して信用の崩れとともに株価格S(t)↓と暴落する。これらは、当該社会関係が受け入れ可能な状態まで価値崩壊もおこることである。それから遅遅たる停滞局面となる。これが大恐慌のプロセスである。アメリカの1929年の大恐慌のときの農業恐慌など。
1929年の大恐慌では、現実資本の過剰とその制限から富(貨幣)は擬制資本の大投資と擬制資本累積となり、擬制資本の暴落と崩壊となり、固定分の減価と株の紙屑化で1929年国家予算の10年分の富が失われた。
また労働力商品の価値との等価交換の原理で成り立つ資本主義も等価交換の柔軟性を超えて賃金労働制(資本主義商品社会)も破壊されながら停滞する。
(2) 日本の90年代ではケインズ政策の累積で恐慌、不況は大規模であり、信用崩壊も大規模であった。株価格S(t)も↓であるとともに停滞→も長期にわたった。
① 古典的景気循環には4つの局面があり、それぞれの局面の価格の傾向がある。価格WkをW1 、W2 、W3 、W4として4つの局面にわけると、再生性を古典的循環では仮定できるから、過去の記録から凡そ見積もりの平均と分散を導く。そして、4つの局面における価格Wkと株価格S(tk)との区別と関連から4つのそれぞれの局面の株価の期待値と偏差を過去のデータから抽出、学習することができるという不確実性も存在する。
② また経済事項にもとづいたベイズ的試行。
原因事象αi:((a)~(I)・・)は、株価上下のいわば【隠れた】変数群αi:((a)~(I)・・)である。ここから、主要な変数を主観的に選ばなければならない。これらの試行はあくまで主観的なものである。
ところで、その真なる選出のそれは世界の経済、政治情勢の変化に依存する。これは客観的なものである。
αi・・のうちどれかの事象を選んだら、次にはαi間の相互関係を推量する。株価の変動の諸原因(αiの条件事象)は、また相互に主要地位と副次的地位は入れ替わる。矛盾論である。
こうして、①、②を組み合わせて、主観的考量が可能となるが、それが真なるものであるためには、主観を如何に客観的推移に対応させえるかである。しかし、時代は質的変化した。古典的景気循環の4つの局面にすでに区分できない段階に入っている。
(イ) すでに述べたように、KtはdTWt/dTωtの近似だから、
したがって関数ωと関数Wの間には、
(ロ)W(χ)=∫Ktdω・・・(3)の(ⅱ)なる関係があり、それはWとωとの背離過程と爆発、一致過程である。
景気循環のKtは、マーシャルK(kMと書く)から飛躍対応したものである。それは価値と価格の関係性であり、(dTWt/dTωt);Kを確率密度関数と考えれば、∫EKtdEはある種の抽象的な景気確率分布となる。ただし、先進資本主義国についての景気循環である。
(注)「ⅲ)大恐慌への移行の数学的考察―価値法則への反映的な株価の収束(ラドン・ニコディム定理の密度変化率と景気循環)」の(3)(注)を参照。
<ハ>「ⅱ)株価の変動のいくつか事項要因とベイズの定理、推論的試行(2)株価の変動のいくつか事項要因の(注)」では、(参考)として、須山敦志著「ベイズ推論による機械学習 入門」(講談社)「Capter3」の予測分布の式を紹介した。
予測分布:θはパラメータ、データDで、未知の値χ*を求める場合、
予測分布P(χ*|D)=∫P(χ*|θ)P(θ|D)dθ
データDがすでに手元にあり、未知の値χ*を求める場合について考えると、株価は景気循環に依存するから、パラメータθを景気循環Ktにすると、株価の変動のデータをS、求める未知の値s*とすると、
予測分布P(s*|S)=∫P(s*|Kt)P(Kt|S) dKt・・・(K-1)式
上記の(K-1)式にはそれまでの金利の上下をも含まれている景気循環を反映したものである。ここまでは確率的にも原理的である。
しかし、利潤率低下と利潤量の増大の相補性が破れている時代では、政策当局によって、政策としてとられるかもしれない断続的な政策金利や紙幣増刷によって、とくに紙幣増発は恣意的に無限増発されると利潤率のゆらぎ↑↓には限りがあるとはいえ、株価も一定の時期左右される。
予想される政策金利や紙幣増減刷をβとすると、P(s*|β)(政策金利上下や紙幣量上下のもとでのs*の確率)etc.と景気循環の反映を受けた株価(K-1)式との積となる。このP(s*|β)との積によって、予測しにくさとしてのエントロピー(不確定度)も増大する。βによって株価は↑かも知れないし、効果は失効しているかも知れないし、↓かも知れない。いずれにしてもエントロピーも増大する。
上記のetc.には「政治的対立およびその延長である戦争」などの条件付き確率も入る。それは株価に最も影響を与える。価値増殖過程と相対している交換過程には、人間の利殖欲望が介在しており、例えば戦争に利益をもつ人々もおり、戦争で測りきれない損害をうける多数の人々がおり、数学で解しきれない諸矛盾などによっても変動する。利潤率の歴史的傾向的低下の時代では、なおさらである。